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染色素材・材料

暮らしに役立つ生地知識 その2 化学繊維編

こんにちは!大本染工社員Sです。
前回は天然繊維についてお話しさせていただきましたね。
今回はもう一つの代表的な繊維である化学繊維について、お話しさせていただければと思います。

化学繊維の特徴

化学繊維とは人工的に作った繊維のことで、大きく分けて「再生繊維」「半合成繊維」「合成繊維」に分けられます。
前回ご紹介した天然繊維と違い、原料や製法をコントロールできるので軽さ、強さ、機能性に優れている特徴を持っています。

再生繊維

再生繊維とは、天然の植物繊維(パルプなど)を化学薬品で溶かし、再び繊維として成形したものをいいます。
代表的なものに「レーヨン」「キュプラ」「リヨセル」などがあります。

メリット

・セルロースを原料としているので吸湿性・放湿性に優れ、蒸れにくく快適
・質感は柔らかくドレープ性があり、裏地やインナーに適している
・染料が入りやすく鮮やかで深みのある染色が可能。
・天然素材に近い着心地で、化学繊維にありがちな静電気でまとわりつく不快感が少ない

デメリット

・水に弱く、水に濡れると強度が低下する。※レーヨンは特に水に弱い
・縮みやすく、水洗い不可やドライクリーニング推奨のものが多い
・シワになりやすくアイロンがけが必要になる場合がある
・合成繊維に比べ、耐久性が低くヨレや摩耗により毛玉ができやすかったりする。

半合成繊維

半合成繊維とは天然の分子であるセルロースやタンパク質を化学処理により改質し、繊維に加工したもをいいます。ちょっと難しいのでざっくり簡単に言えば、ベースの天然分子に化学の力で新しい性質を持たせたものです。
天然繊維と合成繊維両方の特徴を持ったハイブリット的な物になります。

代表的なものにはセルロース系の「アセテート系」、タンパク質系の「プロミテックス系」があります。


メリット

・質感が柔らかく光沢がありシルクのような高級感がある
・生分解(最終的に水と二酸化炭素に還る性質)するので環境に優しい
・熱可逆性(熱を加えると軟化、冷めると硬化)があるためプリーツなどの加工がしやすく、ファッション性の高いアイテムが作れる

デメリット

・熱に弱い ※特にアセテート系はアイロンや高温乾燥で変形する恐れあり
・摩擦、化学物質に弱く除光液などのアルカリ剤が付くと溶けたり光沢が無くなったりする
・排気ガスなどで変色しやすい

合成繊維

合成繊維は石油などを原料とし、分子を科学的に合成した人工的に作り出した繊維です。
代表的なものに世界で最も多く生産されている繊維「ポリエステル」や「ポリウレタン」「ナイロン」「アクリル」があります。

メリット

・強度が高く丈夫でシワになりにくい
速乾性に優れていて、カビや虫に強い
天然繊維より安価で製造でき、大量生産が可能

デメリット

・帯電しやすいため静電気が発生しやすく、ほこりや花粉などもつきやすい
・通気性が低く蒸れやすい
・日光で黄変しやすい
・製造過程で出る有害物質など環境には悪いところがある


それぞれの特徴と使用用途まとめ

種類主な代表例特徴使用用途
再生繊維レーヨン、キュプラ、リヨセル(テンセル)– 天然セルロースを原料に化学的に再生
– 吸湿性・放湿性が高く快適
– ドレープ性があり光沢が美しい
– 水に弱く、シワ・摩耗に弱い
ブラウス、ワンピース、裏地、スカーフ、寝具、カジュアルウェア
半合成繊維アセテート、トリアセテート– セルロースを化学的に改質(アセチル化)
– シルクのような光沢と発色
– ドレープ性が良い
– 熱に弱い(特にアセテート)
– トリアセテートは耐熱・耐シワ性が高い
ドレス、スカーフ、リボン、プリーツスカート、ブラウス、裏地、カーテン
合成繊維ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン– 石油由来で完全人工的
– 強度・耐久性が高い
– シワになりにくく速乾性あり
– 吸湿性が低く、蒸れやすい
– 静電気が起きやすい
– リサイクル技術も進展中
スポーツウェア、スーツ裏地、ストッキング、水着、毛布、セーター、カーペット、バッグ、産業資材

まとめ

今回は化学繊維についてお話しさせていただきました。
天然繊維に比べ、吸湿性などの面から見ると少し快適さは劣るかもしれませんが、先ほどご紹介したように安価に製造でき、耐久性にも優れているものが多いので日常衣類やその他産業面でも幅広く使用されている繊維です。
個人的にはポリエステルの素材が入っている衣類が洗濯してもシワになりにくく、耐久性もあって気に入っています。
次回は編み方による違い、織物について解説できたらと思っています。
お楽しみに!